第81話   「垂釣筌」に見る釣岩のランク   平成16年02月22日  

その昔生田権太により名付けられた多くの釣場の中から、幕末に実績のある岩を釣歴50年と云う陶山槁木は湯野浜から由良にかけての釣岩を五つのランクに分けて分類している。


1 「奇岩」
(おき)に大魚の庫(=くら)があり、涯(きし)に小魚の巣がある場所

加茂 ・・・ 浦壁(加茂荒崎のウラカベ)
油戸 ・・・ 豆腐(トーフ
由良 ・・・ 入澗(イリマ)
三瀬 ・・・ 阿岨(オソ)
 
2. 「最岩」
二番目に良い岩場とされる。大魚が常に踊り小魚が常にすむ岩場を云う。

加茂 ・・・ 横澗、砂澗、下途(オリト)
油戸 ・・・ 荒崎、五載(ゴサイ)
由良 ・・・ 兜、屏風、滝尻
白山島 ・・・ 鵜の糞
  
3. 「上岩」
ランク第3位ながら大魚が稀に泳ぎ、小魚が乏しくない程度の岩。

湯野浜 ・・・ 幸神(サイノカミ)
金沢 ・・・ 中島、地獄
加茂 ・・・ 丸岩、動揺(ガクガク)、のばい、三石
油戸 ・・・ 両袖、佐具女妓(ザグメギ)、畠崎
由良 ・・・ 大岩、天口澗、高岩
 
4. 「中岩」
大魚が時に泳ぎ、小魚が時に集まる岩。

金沢 ・・・ 棚岩、獅子岩、権太岩
加茂 ・・・ 鰐澗(ワニマ)、夷澗(イマ)、切途(キリト)、舞台
油戸 ・・・ 大根御、肴箱
由良 ・・・ 天下一、天口場
白山島 ・・・ 三俣(ミツマタ)、畳岩
 

5. 「下岩」
云うに足らざる岩で、何処にでもあるもの。説明の仕様にもする価値が無いとした岩である。


以上が「垂釣筌」に出て来る釣岩のランクであるが、それらの多くはその年の汐の流れ、気候、砂の流入又港の建設等の環境破壊によって釣れる岩は年々変ってしまったものが多い。例えば加茂の加茂荒崎の浦壁などを例に取ると昭和40年代までは赤鯛などの大物が結構釣れた場所であったが、近年は今泉漁港側の沖にテトラが入ったせいで、浅くなり釣れなくなった。それでも釣れる岩とされる岩が何箇所か残っている。豆腐、荒崎、五載(五歳場)、切途(キリト)などがそれである。